「病院・クリニックを守る」医療機関向け就業規則の作成(変更)法
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「病院・クリニックを守る」医療機関向け就業規則の作成(変更)法

2014年02月06日(木)2:50 PM
 
昨今、メンタルヘルス・セクハラ・パワハラ・いじめ・職員の問題行動といった、従来の職場では想定できないような労務トラブルが起こり、職員への対応に苦慮するケースが増えています。
 
このようなケースにおいて、職員対応の根幹となるのが就業規則ですが、

就業規則にそのような現代型の労務トラブルが想定されていない。

そもそも小規模のクリニックで、就業規則自体を作成していない。

あるいは、作成はしてるものの、一切メンテナンスをしていない。

といった状態が見受けられ、それでは、「病院・クリニックを守る」適切な対応をとることが難しいと言えるでしょう。

なぜ「病院・クリニックを守る」ことが難しくなるのかは、下記の理由にあります。
 
【日常の労務管理において】

必要な服務規律を明文化して職員に周知・徹底していないと、職場のモラルが低下し、トラブルが起きやすい環境になる。

賃金の計算・支払い方法や出退勤・遅刻・早退等のルールを細かく定めておかないと、場当たり的な対応になり、トラブルの元になりやすい。

独自で作成した内規や取扱マニュアルは、専門家の目が入っていないため、法令に抵触している恐れがある。

就業規則の内容を、最新の法改正に対応してメンテナンスしておかないと、知らないうちに法違反状態に陥ることになる。

法令や就業実態に適合した内容にしておかないと、労働基準監督署等の調査が入った際に、是正勧告書や指導票を受けることになる。
 
【トラブルが発生した場面において】
 
懲戒処分や解雇を命じるには、法令上、就業規則または雇用契約書等による根拠が必要とされている。

上記において、一般的に雇用契約書では、紙面のスペース上それらの根拠があまり具体化されておらず、それだけでは実務的には使いにくい
→このため、就業規則において、より具体的な根拠条文を設けておくことが重要。

法的根拠が薄い中で命じた懲戒処分・解雇には、職員が従わない恐れがある。

上記において、いったん受け入れた場合でも、後になって不服を申し立ててくる可能性が高い。また、裁判等で病医院が不利になる。

職員とトラブルになり、労働基準監督署へ訴えられた場合、基本的に労働基準監督署は労働者を保護する。
→このため、賃金の支払い等を巡って双方の主張が食い違った場合、病医院の主張が認められないリスクが高い。
 
このような事態になるのを避けて、「病院・クリニックを守る」医療機関向けの就業規則を作る(変更する)には、以下のポイントをご参考にして下さい。

1.就業規則とは

就業規則とは、事業場における労働時間・休日・賃金などの労働条件や、労働者が就労にあたって守らなければならない服務規律・勤怠ルールなどについて具体的に定めた規則です。
 
【就業規則の作成・届出義務】

労働者が常時10人以上の事業所には、その作成および労働基準監督署への届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。
 
【就業規則の周知義務】

作成した就業規則は職員に周知しなければなりません(労働基準法第89条)。
周知の方法には、以下の方法があります。
(1)職場の見やすい場所に常時掲示するか、備え付ける。
(2)職員に交付する。
(3)磁気テープ等に記録し、常時確認できる機器を設置する (パソコンなどで閲覧できるようにする)。

2.就業規則を作る目的

就業規則の作成は、職員数が常時10人以上になると法律上の義務となりますが、10人未満だから作成しなくてもよいものではありません。
職員を数名雇用すれば、勤怠、残業、服務規律、賃金等、日々の管理が必要となりますから、それら労務管理の決まりごとがない、または曖昧では、場当たり的な対応となり、経営者自身が対応に苦慮するうえに、職員も安心して働くことができなくなります。
 
職場の就業条件を明確にする
労務管理上の取扱い方法等を明確にする
職員に守ってもらうべきルールを明確にする
                         +
経営理念や職場の方針を周知・徹底する
様々な労務リスクから病医院経営を守る
職員の福利厚生を充実させ、モチベーションの向上を図る

3.就業規則に記載する事項

労働基準法上、就業規則に必ず記載しなければならない事項が定められています。(労働基準法第89条)
 
【絶対的必要記載事項】

どのような事業所でも必ず記載しなければならない事項
(1)始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに複数交代勤務制を採用する場合は、就業時転換に関する事項 
(2)賃金の決定方法、計算方法、支払方法、 賃金の締切・支払の時期、昇給に関する事項 (いずれも臨時の賃金等を除く。)
(3)退職に関する事項(解雇の事由を含む) 
 
【相対的必要記載事項】
 
事業場で定める場合は、必ず記載しなければならない事項
(1)退職手当に関する事項 
(2)臨時の賃金等に関する事項 
(3)退職に関する事項(解雇の事由を含む)
(4)最低賃金額
(5)労働者に食費、作業用品その他(社宅費、共済組合等)の負担をさせる場合に関する事項
(6)安全及び衛生に関する定めをする場合に関する事項
(7)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(8)表彰及び制裁に関する事項
(9)以上の他、当該事業場の労働者すべてに適用される定めに関する事項(服務規律、異動、休職、福利厚生等)
 
具体的には、次のようなポイントに着目すると分かりやすいと思います。
 
【就業規則の主なチェックポイント】
 
(1)採 用

採用時に提出させる書類にどのようなものがある?

試用期間は何ヶ月間?本採用する・しないを判断する基準は?

(2)就 業

始業・終業時刻・休憩時間は何時から何時まで? 勤務時間は職種や曜日により違うの?

職員の年次有給休暇は何日与えなければならない? 産休や育児休業は?
 
職員が結婚したり、家族に不幸があった時に休暇は与える? 与える場合は何日?

病気により長期欠勤が見込まれる時は何ヶ月間休職させる? 休職期間中の給与や復職させる時の基準は?

職員が無断で遅刻や欠勤した時の労働時間、賃金の扱いは?また、罰則は?

職員がツイッターに根拠のない自院の誹謗中傷を投稿したことが発覚、職員への対応は?

(3)退職・解雇

定年の年齢は何歳?定年退職後に再雇用する?

どんな時に職員を解雇することができる? どんな時に職員に懲戒処分を科すことができる?

(4)賃 金

給与の構成はどうなっているか。どのような手当を出しているか?

家族手当や住宅手当、通勤手当は払う?払う場合の基準は?

残業代の計算方法は?法的に間違った方法になっていないか?

遅刻・欠勤分の給与を引く時の計算方法は? 計算期間途中に入職・退職があった場合の、日割計算の計算方法は?

賞与や退職金は払う?払う場合の対象者やその金額は?

この他にも、安全・衛生や教育、福利厚生などについて、法律上の義務や自院での取り決めがあればその定めを就業規則に規定します。

4.医療機関に合った就業規則作成(変更)のためのポイント

就業規則を作成(変更)する時は、医療業界の特性や個々の病院・クリニックの風土に合わせた内容にすることが大切です。
 
【労務トラブルを起こしやすい就業規則の例】

(1)就業規則が古いままで、メンテナンスを怠っている。

最近の法改正に対応していない。

規程内容と実際の就業体制との間に大きな乖離がある。
 
(2)労務管理に関する規定が曖昧になっている。

服務規律(遵守事項や禁止事項など)や勤怠ルール(遅刻・欠勤時の扱いなど)、懲戒規定(減給や懲戒解雇など)が細かく規定されていない。

給与の決定や支払い、計算方法などについて細かく規定されていない。
 
(3)ひな形や他院の規則をそのまま使っている。

労働局などのひな形をそのまま使用すると、労働者有利の内容が多く規定されている。

大病院向けや異業種向けのひな形をそのまま使用すると、自院の就業実態にマッチした規定になっていない。
 
【医療で気を付けたい主なチェックポイント】

(1)選考時・採用時の提出書類

経歴詐称がないか、医師免許・看護師免許等は書面で確認する。

自家用車通勤の場合は、運転免許、自賠責、任意保険等を確認する。

雇用契約書は常勤・非常勤を問わず交付する。

服務規律遵守、秘密漏えい禁止、損害賠償などについて誓約書を 取得する。

身元保証書を取得する。
 
(2)試用期間に関する定め

試用期間は何ヶ月とするのが妥当か。

本採用するか・しないかの判断基準を明確にする。

試用期間が見極め期間であること、当院基準に満たないと判断する場合には本採用しないこと、を確認しておく。

試用期間中または満了時の解雇でも解雇予告手当の支払いは必要 (採用後14日以内の解雇を除く)

雇用保険・社会保険の加入は、加入要件を満たしているのであれば、入職日から加入が原則。
 
(3)労働時間に関する定め

始業・終業時刻は現在の勤務実態と乖離していないか。

法定労働時間(1週40時間*・1日8時間)は守られている?
 *特例対象事業場・・労働者数が常時10名未満の病医院は1週44時間

「始業・終業時刻」=「診療開始・終了時刻」でよいか。
 →診療開始前の準備時間、診療終了後の片付け時間は考慮する必要があるか。

訪問診療時の労働時間をどのように取り扱うか。

残業時間はタイムカードの打刻通り認めるのか。
 
(4)変形労働時間の活用

個々の医院の診療時間や季節による患者の増減などにより、変形労働時間制(1ヶ月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制)を活用する。
 
(5)電話番・院内清掃等に関する取り決め

昼休み中の電話番や来客対応のため、職員を待機させる必要があるか。

電話等が必要な場合、その時間をどのように取り扱うべきか。 電話や来客がない時間は自由にさせていても、待機時間に対して賃金を支払わなければならないのか。

所定労働時間外で手がすいた時に、軽微な院内清掃や書類整理などを命じている場合、残業代の支払は必要か。

(6)服務規律に関する定め

患者対応等の接遇に関して、注意を促しているか。

職場における服装・髪型・化粧などについて、具体的に定めるか。

白衣等のユニフォームの着用について、具体的に定めるか。

病医院の機密情報の保持や、レセコンやその他PC・電子メール等の使用について、注意を促しているか。

セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントの防止について明文化しているか。
 
(7)賃金に関する定め

残業代を定額で支払っている場合、その旨を規程上も明確にしているか。

資格手当や技能手当を支払っている場合、残業代の算定基礎に含めているか。

当直に対して、1回当りで金額を定めた手当を支払っている場合、そもそも当直の実態が労基法上の宿日直(法第41条第3号)に適合しているか。

残業代計算や日割計算等で必要となる端数処理の方法は適切か。
 
(8)学会・研修参加に関する取り決め

勤務日に行われる学会発表や研修・セミナー参加をどこまで認めるか。

学会発表や研修・セミナーの参加費・交通費・宿泊費は病医院がどこまで持つのか。

院内での勉強会・講習会への参加を強制することはできるか。

学会・研修参加に関してトラブルにならないよう、就業規則等にあらかじめ基準や取扱いを明示しておくことが大切。

5.就業規則作成の手順と依頼

就業規則の作成(変更)する時の具体的な流れは以下のとおりです。
 
【就業規則の作成(変更)手順】

▼STEP1 就業規則の作成(変更)

規定内容を検討し、自院に合った就業規則を作成(変更)します。

作成(変更)は、院長や事務長等、自院の人事・労務の実態についてよく把握している方が討議して行います。

作成・届出義務が生じる「常時10人以上」の人数には、パート・アルバイトも含まれます。 (派遣は含まれません。)

▼STEP2 労働者代表の意見聴取

作成した就業規則は、職員にその内容を説明しなければなりません。

説明は、本則をそのまま各職員に交付して行ってもよいですし、内容を要約した説明資料によって行っても構いません。

意見聴取の対象は、事業場の労働者の過半数を代表する者*です。
 *投票、挙手等の方法による手続きにより選出され、かつ、管理監督者でない者

あくまでも「意見聴取」であり、職員代表の「同意」までは要しません。
 但し、変更の場合で、その内容が労働条件の不利益に当たるのであれば、
 「変更の必要性」や「変更の内容・程度」、「代替措置の検討」等の状況により、
 個々の職員の同意を得なければならないこともあります。

▼STEP3 労働基準監督署への届出

事業場の所轄労働基準監督署へ届出を行います。

分院等、事業場が複数ある場合、労働者が10人以上いる事業場ごとに届出が必要です。

▼STEP4 労働者への周知

作成した就業規則は、院内でいつでも見られる状態で保管するか、各人に配布するなどしましょう。
 
【社会保険労務士への依頼】

就業規則の作成(変更)から届出にかかる業務は、必要に応じて専門家(社会保険労務士)に相談、依頼*します。
*就業規則の作成・届出業務は、社会保険労務士以外の士業・コンサルタント等が、業として行うことはできません。
 
社会保険労務士に依頼する場合の費用は各事務所にお問合せ下さい。業務完了までに要する期間は、作業ボリュームや打合せのために確保できる日程次第ではありますが、概ね2~3ヶ月程度となります。


 
長友社会保険労務士事務所では、医療専門の社労士事務所として、病院・クリニックのお客様からの豊富な依頼実績がございます。
 
就業規則の作成(変更)に関する業務内容及び料金は、下記のページをご参照下さい。
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