病院・クリニックを守る就業規則の作り方
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病院・クリニックを守る就業規則の作り方

2022年08月18日(木)11:34 PM

 

院長先生、こんなお悩みありませんか?

 

 

・過度な権利主張ばかりする職員がいて困っている!

・自分勝手で頻繁に問題行動を起こす職員に辞めてもらいたい!

・近隣のクリニックで院長先生が職員から集団で訴えられたらしい!

・世の中の働き方改革の流れには逆らえない。自院の就業規則は適正か?

・開業時から適正な就業規則を整備して労務トラブルに巻き込まれたくない!

 

 

こんなときには就業規則の出番です。病院・クリニックを守るため、就業規則について勉強して自院に最適な就業規則を作ってみませんか?

 

 

1.増加する労使トラブル

 

 

  • 情報化社会の進展

現代はインターネットの普及により、個人でも法令情報を容易に入手できる環境です。職員は院長先生が思っているより労働問題に詳しいのです。職員がミスをした時についかっとなって「何度言ったら分かるんだ!○○ヤロー」なんて口にしてしまうと、1週間後には弁護士からの書類が送られてくるかも・・

 

 

  • 職員の権利意識の高まり

現代の職場ではかつての家族的雰囲気の良さが失われつつあります。職員は職場全体のためを思って協調するよりも、個人の権利行使を優先させる傾向にあり、労務管理は複雑化の一途をたどっています。「あの頃は良かった」と嘆きたくもなりますが、時代に合わせて経営者側も意識を変えてゆかねばなりません。

 

 

  • 行政による監督強化

ブラック企業、パワーハラスメント、働き方改革など、企業の職場環境に向けられる周囲の視線は厳しさを増すばかり。それに伴い労働基準監督署等による監督・調査も強化されており、病院・クリニックもその例外ではありません。このような監督・調査に耐えうる適正な労務管理が求められているのです。

 

 

2.病院・クリニックで労使トラブルが多い要因

 

 

世の中では労使トラブルが年々増加している状況にありますが、病院・クリニック経営も他人事ではありません。それどころか各種統計によると最もトラブルが多い業種と評価されているようです。それでは、なぜ病院・クリニックでは労使トラブルが多いのでしょうか。

 

 

  • マンパワーの不足

病院では主に総務部門が労務管理を担っていることが多いといえますが、総務部門は他にも経理や医事など様々な業務を所管しているため、職員対応にばかり力を割くわけにはいきません。

クリニックにおいては事務長がいる場合はまだしも、そうでない場合は院長先生自らが労務管理を担わなければならず、診療に忙しい院長先生が前述のように複雑化する労務管理を適切にこなすのは困難が伴うでしょう。

 

 

  • 女性職員特有の労務管理の難しさ

病院・クリニックは一般企業に比べて女性職員が占める割合が高い職場です。女性の場合、妊娠・出産・育児といったライフステージの変化に合わせて、産休や育休、時短勤務を利用するなど柔軟な働き方が必要となることが多いため、病院・クリニックはその適切な対応が求められます。

 

 

  • 院長先生ご自身の労務管理経験

特にクリニックの院長先生は労務管理経験が不足していることがあります。開業前に勤務先の病院でや部長職や医長職などを務めていれば労務管理の難しさを体感されたかと思います。ただし、その場合でも部下のほとんどは男性の医師であったのではないでしょうか。開業後に統率しなければならないのは、女性の看護職や事務職がほとんどで、未知の領域であるはずです。

 

 

3.就業規則とは

 

 

就業規則とは、事業場における労働時間・休日・賃金などの労働条件や、労働者が就労にあたって守らなければならない服務規律・勤怠ルールなどについて具体的に定めた規則のことです。

 

労働者が常時10人以上の事業所には、その作成および労働基準監督署への届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。

 

作成した就業規則は職員に周知しなければなりません(労働基準法第89条)。

周知の方法には、以下の方法があります。
①職場の見やすい場所に常時掲示するか、備え付ける。
②職員に交付する。
③磁気テープ等に記録し、常時確認できる機器を設置する(パソコンなどで閲覧できるようにする)。

 

 

4.作成から届出までの流れ

 

 

就業規則の作成から届出までは下記の工程によります。

 

 

●就業規則の内容を検討

●職員に対して説明

●職員代表者の意見書を取得

●労働基準監督署への届出

●労働者への周知

 

 

5.就業規則によるリスク対策の必要性

 

 

増加する労使トラブル、複雑化する労務管理、強化される行政調査、これらから生ずる様々なリスクから、病院・クリニックを守ってくれるのが就業規則です。就業規則が必要とされる具体的な場面を取り上げます。

 

 

【日常の労務管理において】

 

・必要な服務規律を明文化して職員に周知・徹底していないと、職場のモラルが低下し、トラブルが起きやすい環境になる。

・賃金の計算・支払い方法や出退勤・遅刻・早退等のルールを細かく定めておかないと、場当たり的な対応になり、トラブルの元になりやすい。

・勤務時間や休憩、休暇など、職員から質問や要望を受けたときに適切な回答をすることができない。

1か月単位の変形労働時間制を採用したいは必須(下記参照)。
 *労使協定の届出によっても採用可能

 

 

【トラブルが発生した場面において】

 

・懲戒処分や解雇を命じるには、法令上、就業規則または雇用契約書等によ根拠が必要とされている。

・法的根拠が薄い中で命じた懲戒処分・解雇には、職員が従わない恐れがある。

・職員とトラブルになり、労働基準監督署へ訴えられた場合、基本的に労働基準監督署は労働者を保護する。

 

 

6.トラブルになりやすい就業規則

 

 

「就業規則はクリニックを開業したときに作ってあるから大丈夫」、でも先生、それは何年前のお話しですか?本当にその就業規則で大丈夫ですか?

実は、就業規則は作ってあれば大丈夫というものではありません。その内容が「適切な」ものでないと、トラブルを引き起こす恐れがあるのです。

 

 

【こんな就業規則は危ない】

 

開業前に勤務していた病院の就業規則をほとんど変えずに作成した。

元勤務先の病院が大病院であれば、休暇や福利厚生などの面が規模に応じて充実しているかもしれません。そのような条件は開業したばかりのクリニックにとっては重荷になってしまう恐れがあります。元勤務先の病院の就業規則をベースにして作成する場合は中身を十分に精査して下さい。

 

書籍やインターネットなどで入手した雛形をほとんど変えずに作成した。

入手した雛形が最新のものであればよいのですが、実は数年前に作成されたものをダウンロードしていたような場合には、直近の法改正動向(労働関係法令は改正が頻繁にあります)に対応していないリスクがあります。そのような雛形を利用する場合には、作成時期を必ず確認して下さい。

 

開業以来、就業規則の内容を改訂していない。または、ほとんど改訂していない。

就業規則はクリニックを開業したときに作ったきり、ずっと机の中にしまいっ放し。もしくはその保管場所すら覚えていない。なんてことはありませんか?せっかく作った就業規則もそれでは意味がありません。また、古い就業規則では上記と同様に直近の法改正動向に対応していないでしょう。作成した就業規則はその後のメンテナンスが大切なのです。

 

 

7.病院・クリニックに合った就業規則

 

 

病院・クリニックの就業規則を作成する場合には、医療業界の特徴や規模に合わせたものとすることが望まれます。一般企業向けの就業規則ではかみ合わない部分が出てきますし、同じ医療業界であっても、入院施設のある病院・クリニックと入院施設のないクリニックとでは特徴が異なります。下記にその特徴を幾つか挙げました。

 

 

○1か月単位の変形労働時間制の導入

 

法定労働時間は原則として1日8時間、1週40時間とされています。

 

この例外として、1か月単位の変形労働時間制があります。これは、1か月の中で1週間の労働時間が平均40時間以内に収まっていれば、1日及び1週の法定労働時間を超えて労働時間を定めることができる制度です。

 

例えば、平日の労働時間数を9時間としたい場合、1日の法定労働時間(8時間)を超えてしまいますので、1か月単位の変形労働時間制を採用します。下記のようなクリニックで有効です。

 

①平日(水または木が休診) 1日9時間×4日間=36時間

②土曜日 1日4時間

③日曜日 休診

1週合計(①+②) 40時間⇒法定労働時間に収まる

 

また、1回8時間を超える夜勤のある病院・クリニックであれば、この1か月単位の変形労働時間制が必須となります。

 

 

○特例措置対象事業場の活用

 

1週間の労働時間は上記法定労働時間に即して40時間以内で定めなければなりませんが、常時10人未満の労働者を使用するクリニックは、特例措置対象事業場に該当するため、1週間の労働時間を44時間以内とすることできます。

 

 

○所定労働時間を定めるときの注意点

 

例えば、診療時間が9時から13時、15時から18時30分というクリニックにおいて、就業規則上の職員の勤務時間を同じ時間で定めてもよいものでしょうか?

 

就業規則で定めるクリニックの労働時間のことを所定労働時間といいますが、「診療時間=所定労働時間」と定める場合には注意が必要です。

 

なぜなら、所定労働時間を超えて労働させた場合には、その時間を残業として取り扱わなければならず、それに伴った残業代の支給が必要となるからです。

 

一般的に院長先生が午前・午後の診療を開始するときは、その少し前には職員に出勤してもらい、患者様を受け入れられるように準備するための時間が必要になります。このような準備時間が必須なのであれば、所定労働時間は上記の診療開始時間より例えば15分早く設定するといった対策をとるとよいでしょう。

 

そうすると、8時45分から13時、14時45分から18時30分がクリニックの所定労働時間となるわけです。

 

 

8.社会保険労務士に委託するメリット

 

 

就業規則は院長先生ご自身で作成することもできますが、適切なものを作るとなるとハードルは高いといえます。

 

というのも、就業規則には法律で記載を義務付けられた項目がいくつもあり、まずは必要な項目が網羅されているのか認識できていなければなりません。最初から法定記載事項が網羅され、直近の法改正動向にも対応した雛形を選んでいればよいのですが、そうでない場合には不適切な就業規則になってしまいます。

 

また、就業規則には各病院・クリニックの事情に合わせて任意で定めてよい項目があるのですが、任意であるがゆえに定め方の基準が分からず難しくなってきます。

 

このため、法定記載事項や任意記載事項を正しく知っていないと、変更してはいけないところをアレンジして法律違反になる、逆に独自で定めていいのに雛形のままということが起こりかねません。

 

こうした難しい就業規則の作成を、正しい専門知識と豊富なノウハウで適切なものに仕上げてもらえるのが社会保険労務士です。社会保険労務士に委託すると、適切なものを手際よく作成してもらえるのが大きなメリットとなるでしょう。

 

 

9.医療に詳しい社会保険労務士

 

 

社会保険労務士は業種にかかわりなく就業規則を作成することできますが、医療業界は特殊な分野でもあります。

 

医療保険制度に基づいた医業経営の仕組みや医師が養成されるバックグラウンド、病棟や外来、検査室、手術室などの病院内の機能など、医療分野で働く人々の事情をよく知っていないと医療従事者との会話すらままならない、ということもあり得ます。

 

また、就業規則を作成する過程で「他院はどうなのかな?」「他院とかけ離れたことはしたくない」など、いろいろと気になることが生じるかもしれません。

 

そのようなときに、他院の一般的な水準を知っている社会保険労務士であれば、「ここは病院やクリニックの一般的な水準で決めましょう」「ここは他院よりも優遇しましょう」など病院・クリニックの事情に合わせた最適な判断・提案が可能になります。

 

また、「他の病院やクリニックでは、こういう規定も入れてますよ」といった、院長先生自身が気づいていない提案をされる可能性もあります。このため、医療について詳しい社会保険労務士に依頼するメリットは大いにあるでしょう。

 

 

最後に~病院・クリニックを守る就業規則とは~

 

 

就業規則は職員の権利を守るのも大切な機能ではありますが、病院・クリニックの立場に立つと、むしろ病院・クリニックを守る機能を強化していかなければなりません。

 

社会保険労務士法人NAGATOMOでは、医療分野に強い社会保険労務士事務所として日々研鑽を積んでおります。病院・クリニックの立場に立ち、その声によく耳を傾けて、親切さと丁寧さをモットーに、高品質で満足度の高い就業規則を作成することをお約束します。



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